生と還りの環(わ)上山明子 展

2026年1月13~18日

上山明子は、長年にわたり「命とはいかなるかたちをとるのか」という根源的な問いに向き合ってき
た作家である。その作品は、生命がただ生きているという事実だけでなく、やがて終わりを迎える存在
であることも内包した、より大きな “生の循環” を静かに見つめる姿勢に特徴がある。本展では、その探
究の延長線上にある思索が、「輪/環」という象徴的な形態を通じて、より明確なかたちを帯びて立ち
上がる。
今回の新作で中心となるのは、「輪/環」という象徴形態である。それは、生と死、始まりと終わり
、記憶と忘却の境界を結び直す“通路”としての象徴であり、作家自身の体験から生まれた再生のイメー
ジとも重なっている。「環」は閉じられた円としてではなく、絶え間なく流動し、揺らぎながら世界と
接続する“循環の位相”として捉えられている。
素材には、和紙を樹脂加工したワーロンシートを採用し、そこに漆や箔による層的な加飾を施している
。伝統素材である漆と金属箔の深い質感と、光を柔らかく透過するワーロンシートの軽やかさが響き合
い、物質と空気、光と陰影が連動する立体として独自の存在感を放つ。本手法は、上山が乾漆を基軸に
培ってきた身体的な制作方法に現代素材を組み合わせることで生まれた、新たな素材研究の一端である

作品は、日本館に所蔵される 藤田嗣治《欧人日本へ渡来の図》 の前に展示される。繊細な光の扱い
と静謐な気配をまとった藤田氏の作品と、循環的かつ象徴的な「環」の彫刻が同じ空間に共存すること
で、両者のあいだには“静かな共鳴”が生まれるだろう。時代も技法も異なる二つの表現が、光、気配、
そして人間の内的世界をめぐる感性によってゆるやかにつながる本展示は、日本館ならではの対話的な
空間体験を提示する。
会期中には、作家によるレクチャー(乾漆技法・漆文化についてのトーク)に加え、乾漆でつくった
小さな彫刻に箔押しを施す親子ワークショップも開催予定である。伝統的な素材と技法の体験、親子で
参加できる“創造の入口”として企画されている。
本制作にあたり、ワーロン株式会社より素材提供を賜りました。

作家プロフィール
上山 明子(Akiko Ueyama)
愛知県立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。乾漆技法を軸に「生命のかたち」「生の循環」をテ
ーマとした制作を続けている。
仏像保存修復や美術教育の経験を背景に、漆と麻布の層構造が生み出す時間性と物質性を、現代彫刻の
造形言語へと結びつける表現を探究してきた。近年はワーロンシートなどの現代素材を取り入れ、伝統
技法との組み合わせによる新たな素材研究を進めている。
2018年には 名古屋市芸術賞(奨励賞) を受賞し、国内での個展活動を重ねる一方、2024年にはフィン
ランド・タンペレの “Residence in Art” に招聘され制作・展示を実施。2025–26年には、パリ・Cité
internationale des artsでの滞在制作を予定している。伝統と現代素材を往還しながら取り組む自身の実
践を、より広い国際的文脈の中で発展させている。

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レクチャー】 
漆でかたち創る|乾漆技法と私の制作
1月18日(日)13:00〜14:00

本レクチャーでは、日本の伝統技法である乾漆(かんしつ)を通して、漆という素材がどのようにかた
ちを生み出すのかをご紹介いたします。
漆の特性、乾漆の歴史、工程の流れ、そして現代の制作へどうつながっているのかを、私自身の作品制
作と合わせてお話しいたします。
今回パリで制作している作品についても、制作プロセスや素材の扱い方を交えながら丁寧にご紹介しま
す。

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【親子ワークショップ】  
1月17日(土)  13:30〜15:30 開催
「漆素材でつくる小さな光:乾漆+箔ワークショップ」

申し込みフォーム
https://forms.gle/A3JLf2oojEufvRDh8

このワークショップでは、日本の伝統素材である 乾漆(かんしつ) をベースに、小さな造形に 箔押し
(はくおし) を体験していただきます。
親子で一緒に作品を仕上げる中で、素材の手触りや光の美しさを感じてもらえる内容です。

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